百合香への報告も終わらせると、挙式の支度が本格的になってきた。

「だりあのウェディングドレス、別嬪さんやなぁ」

 衣装合わせでオフショルダーのウェディングドレスに身を包んだだりあは、気恥ずかしいながらも大介に褒めてもらって上機嫌である。

 大介はグレーのフロックコートを着、シルクハットを手にした。

「何か歴史上の偉人みたい」

 だりあの喩えに苦笑いしたが、そこは没落しても名家の血筋らしい風格は出る。

 前撮りの撮影をモニターで確認をしてみると、

「やっぱり大介は王子様みたいになるんだね」

「関西弁の王子様って…」

「そんなこと言ったら、私だってわがままで世間知らずなプリンセスじゃん」

 屋外での撮影が始まった。

 この日は朝まで雨であったが、撮影の始まった午後には雲の裂け目から光芒(こうぼう)が射してきた。

「あれ、天使の梯子だっけ?」

 大介が指さした先には光の(すじ)がある。

「百合香が見に来たのかも」

 だりあと喋っているうち、

「すいません、ジャンプする写真撮ります」

 カメラマンに言われるがまま、大介とだりあはカメラマンの合図に合わせて、芝生の上をジャンプしてみせた。




【完】