だりあと付き合い始めてしばらく経った頃、
「大介に渡したいものがあるの」
だりあが手にしたのは、吊り手のついた小さな紙袋である。
「誕生日うち三月やで」
言いながらも開けてみると、アクアマリンのペンダントが出てきた。
「大介は仕事柄、指輪できないからさ…」
だりあからの、いわば逆プロポーズのメッセージである。
「…ありがと」
さっそくつけてみると、少し武張った大介の胸もとに淡いブルーが映える。
「だりあにも指輪買わなきゃ」
「じゃあ、新しく真っ赤なカップ焼いてくれる?」
あの六角カップまだ使ってるよ──だりあは大切に使っていたらしい。
百合香の真似じゃないけど、とだりあは笑いながら、
「私は、明日もし世界が終わっても後悔はないよ。だって大介と一緒なら、どんな明日が来たって怖くなんかないもん」
言葉に詰まった大介は、だりあを無言で抱き締めた。