個展が始まった初日、伊勢佐木町のギャラリーのそばに一台のカスタムカブが停まった。
札幌ナンバーである。
「ネット見てたら見つけました」
といってあらわれたのは、京都のカプセルホテルで痛飲した、あの大学生であった。
「インスタグラムで話題になってたんで来たら、あのときの人だったんでビックリしましたよ」
神保翔太郎、と名乗ったこの大学生は余談ながらこのとき、受付にいた兵藤みのりに一目惚れをしてしまい、のちのち騒ぎを演ずるにいたるのだが、それはこの本題ではない。
話を戻す。
個展が終わってすぐ、だりあは大介を広尾のマンションに招いた。
「いつも私が行ってばっかりだから、たまには来て」
だりあらしい自己主張だが、この頃になると大介もだりあの押しの強さには慣れてきており、
「こらぁ間違いなく嬶天下になりそうやわな」
大介はこぼした。