ふと「百合香…ごめん」とつぶやいた言葉を、みのりが聞いていた。
「あのだりあさんって多分、先生と似てるんだと思います」
みのりに言わせると、
「変に痩せ我慢したり、意外なところでプライド高かったり、少し素直じゃないところがそっくり」
みのりはクスクス笑い始めた。
この時期、大介は二回目の個展の準備の最中であったが、
「大介、お弁当作ってみたよ」
外食ばかりのだりあが、初めて弁当を作って生麦ベースまで持って来た。
開けると茶色一色で味もムラがあるものであったが、
「美味いやん」
そうやって平らげた次の日に腹痛を起こし、だりあに泣かれてしまったことも、みのりは聞いている。
互いに不器用な生き方しか出来ないところも似ている、とみのりは指摘してから、
「だけど、本気で人に向き合って生きることって、実は素敵なんだなってことは、先生を見てよく分かりました」
みのりが学んだのは、陶芸の技術だけではなかったようである。