だりあは二人で話し込んでいた様子は見ていたらしく、
「なに、男どうしで…何かエロい話?」
「いやいや、そんな色気じみた話が出来るようなレストランじゃないし」
悠介のもとへメインディッシュが来た。
だりあは少し訝ったが、だりあのもとへもメインディッシュのローストビーフが来ると、
「久しぶりだな、ここのローストビーフ」
確かシドニーから帰って来てからは初めてじゃないかな、とだりあはめずらしく感傷的なことを言った。
「うちはママが私が三歳のときにに離婚していなくなって、最初は祖父母の家にいたんだけど、それでパパの仕事が軌道に乗り始めて、そのあと一時シドニーにいて、大学のときに日本に帰って来たのね」
どうやらそれ以来の、このレストランのローストビーフであるらしい。
「うちなんか近江牛の味噌漬けぐらいしか知らんで」
「ビーフを味噌漬け?」
「まぁ滋賀の人間しか知らんけどな」
だりあはスマートフォンで調べ始めた。
「めっちゃ美味しそう…今度取り寄せてみよっと」
だりあは食べ物に対する好奇心は強かったらしい。