週末の金曜日、スーツ姿の大介は鶴見から根岸線で有楽町まで出ると、待ち合わせのだりあを目で探した。
「…大介お待たせ!」
振り向くと、だりあはクリーム色のワンピースに白のカーディガンを羽織った、典型的なお嬢さまスタイルであらわれた。
「大介ってスーツ似合うよね」
こんな無邪気なだりあを見たのは、久しぶりではなかろうかというぐらいであろう。
「…ね、手つないでいい?」
「えぇよ」
だりあは左利きの大介に気を遣って、右側へ回ると右手をつないだ。
「銀座なんか何年ぶりやろか」
普段、大介は外食はほとんど横浜で、たまに百合香と食事をするときも、まれに恵比寿ぐらいしか行かなかった。
ワークショップの帰りに、みのりと食事をするときでさえ、渋谷のファストフードである。