ねぇ大介、と初めてだりあは呼び付けにしてから、

「大介だったら、どうする?」

「そらさっき言うた通り、好きな人が別にいるからって断わる」

 百合香がいたら、とだりあは溜息をついた。

「だりあちゃん、そういえば百合香とは親友やったもんな…」

 でも、と大介は、

「仮に百合香が聞かれたら、同じ答えが返ってくるんとちゃうかな」

 あれで百合香ははっきり言うところあったし、と大介は土産のマドレーヌを出した。

「…まだ百合香のこと、好きなんだ?」

「てか、男は死ぬまで昔の女を、忘れへんもんやと思うけどな」

 大介は抹茶を点てる。

 少なくともうちが生きてるうちは──と前置きした上で、

「うちが生きてる限り、ずっと百合香はうちの中で生きとるから、まぁ誰か違う人があらわれたら変容はあるかも分からんけど、百合香を忘れるってのは、うちがボケたりせん限りないやろなぁ」

 だりあは降参したような顔で、

「…お見合い、断わることにする」

「それでこそ、いつものだりあちゃんやがな」

 大介にほめられたのが嬉しかったのか、

「今度さ、パパと三人で食事しに行こ」

 初めてだりあは大介にアプローチをしてみたのである。