搬送先の病院に、だりあと社長の悠介が来た。

「うちの佐藤百合香は…?」

 悠介に問われた医師はかぶりを振った。

「残念ですが」

 医師の宣告を遮って、だりあがたまらずロビーを駆け出してゆく。

 遅れて、大介がヘルメットを手に正面玄関にあらわれた。

「大介さん…百合香が、…百合香が」

 だりあは視線の先に、大介を見つけた。

 見つけたはいいものの、だりあは言葉を失うと、膝から崩れて嗚咽を漏らし、次第に顔を歪めグズグズに泣きじゃくっていった。

 悠介は軽く鼻をすすってから、

「…事故とは余りにも残酷な」

 そっぽを向いた。

 大介は何も言わず、だりあにそっと寄り添って肩に手をやったが、泣き崩れるままのだりあに、なすすべもないまま深い溜息をついた。