雨は夜が更けるとことさらに強くなった。
「じゃあ、今日は帰るね」
百合香は生麦ベースを出ようとした。
「…泊まってくのは、あかんの?」
珍しく大介がねだるような言い回しをした。
「明日仕事だからさ」
「そっか…」
言うが早いか大介は、百合香を力を込めて抱き締めた。
「しばらく、このまま抱き締めててえぇ?」
「うん」
百合香は滅多に寂しがらない大介がぬくもりを求めているのが分かったのか、しばらくされるがまま抱き締められていたが、
「…今度の週末、また逢お?」
少し落ち着いたらしく、
「せやな」
いつもの笑いじわが大介に戻った。
そうしてキスを交わし、百合香は軽自動車で自宅のある武蔵小杉のマンションを目指した。