だりあからすれば、百合香がとことんまで大介に尽くしていることに不安も感じていたらしく、
「そんなに尽くして大丈夫?」
捨てられたとき大変だよ、とだりあが言ったときには、
「大介さんは、私を捨てたりなんかしない」
逆はあるかも知れないけど、と笑って返したあと、
「彼はどんなことにも必死で戦って生きてる。だから私は彼の癒やしになりたいし、私といるときだけは、せめてリラックスしてて欲しい」
そうであり続けられる限りは変わらない…と、それまでほとんどなかった言い方で百合香はだりあに言い返してみせた。
だりあは百合香の変化を見て、少しついていけないところもなくはなかったが、
「…恋ってあんなに変えちゃうんだ」
というのと同時に、
「大介さんはいつも何かと必死で闘っている」
という百合香の言葉が脳裡にこびりついて離れないでもいる。
いつも裏表なく言うのは覚悟のあらわれかも知れなかったし、ときに図星の真ん中を射抜くように言い抜いてしまうのも、命が尽きる前に何か遺さなければならないという意識の発露かも分からない。
「…変わった人なんかでも、ただ毒舌吐いてる訳でもないみたい」
マンションの自室で、窓越しに雨に濡れた夜景を眺めながら、だりあは百合香というフィルターを濾して大介の本質を見たような気がしていた。