休みが合うと百合香は、大介を助手席に乗せてドライブをしたりもするが、

「タンデムする?」

 百合香はリアシートで大介の腰に腕を回し、男らしい大介の体躯を感じながらタンデムで鎌倉や湘南へツーリングをするのが、最も至福を覚える瞬間である。

 大介の取り回しは上手かった。

 あとから聞いたが、ハーレーからスクーターまで何でもこなす手練(てだ)れで、

「高校が工業やったから、メカだけはいろいろ勉強させられたなぁ」

 百合香が聞いたことのなかった思い出話も聞いた。

 金がないからタンポポや昼顔を茹でて食いつないだこと、大工の見習いをしながら工業高校の定時制を出たこと、稼ぎながら学校に行けるという理由で、山科の窯元で働きながら京都の工芸の専門学校に行き、そこで陶芸を身につけたこと──。

「せやからセレブとは違うし、きっと相容れない面は出てくるかも知れんし、だりあちゃんはきっと誰か、えぇ人あらわれてくれるような気がしとったときに、百合香の気持ちに気づいて」

 なので百合香を選んだ事実に間違いはない、と大介は昂然と言い切ってみせたりもした。