週末、生麦ベースには百合香が来るようになった。
ときには釉薬を混ぜる作業を手伝ったり、ガス窯の記録を仮眠中の大介に代わって取るなど、まるで若妻のようにかいがいしく動く。
だりあと三人で遊ぶときにはそうでもなかったが、二人きりになるといつも手をつなぎ、見るからにラブラブである…といわんばかりに一緒にいる。
大介が恋人を大切にする人格であることも分かった。
例のタッセルつきの桜のチャームは、少しデザインの違う物をお揃いで持っている。
七月生まれの百合香は誕生石のルビー、三月生まれの大介は誕生石のアクアマリンを、それぞれつけてあって、桜はそれに見合うように百合香は赤、大介は水色に彩色してある。
百合香は、軽自動車の鍵につけてある。
「これならいつでも一緒だし、なくさないから」
いっぽう大介は、ウォレットチェーンのついた長財布につけてある。
そのため、大介がカスタムカブのクラッチをペダルで繰るたびにタッセルごと、さながら提緒のように華やかに揺れた。