ややしばらく間があって、大介の個展が始まった。
伊勢佐木の長者町にあるギャラリーを借りて数日だけ開かれるのだが、華やかな紫やピンクの作品もあれば、黒白のかけ分けに施釉された物もある。
初日の挨拶と最終日だけ、大介は動く。
百合香は二日目に見た。
たまたま病院に喘息の薬をもらいに行くついでで見たらしいのだが、平日で人も少なかったので、ゆっくりと観賞することができた。
大介のあの複雑な心理を知る立場で見ると、もしかすると大介は、異能に近い天才なのかとも思ってしまう。
特にわざと織部の釉を粗まぜで施釉した六角の器は、計算され尽くした垂れ具合いで作られたのか、美術や芸術に疎いはずの百合香でさえ、見ていて飽きが来ない。
となると。
百合香は自分で、手に負いかねる異性のような気がした。