しばらくして、

「大介さんと会って話してきたさ」

 というので、百合香がだりあのマンションを訪ねて来た。

「どうだった?」

 物見高きは世の常である。

 だりあも、多分に漏れず訊いてきた。

「…彼って私みたいに軽い気持ちの女が、ホイホイと付き合っちゃいけない人なのかなって」

「いわゆる重いタイプ?」

「それはさすがにないんだけど、でもスゴく真剣に考えてくれるから、却って申し訳なくて」

 おそらく駆け引きは下手なのかも知れない。

 ──その話は、個展が済むまで待って欲しい。

 というのである。

「大介さんは根が真面目で、豪快に見えたりするのに実は繊細で…だから、私みたいに軽い考えでアプローチなんかしちゃダメなんだと思う」

 百合香は大介の真摯な態度を好ましく感じはしたが、それだけにこれまでには全くいなかったタイプなだけに、少し怖じ気づいてしまっているのかもわからなかった。

「でも、こんな人に真剣に想われたら、間違いなくしあわせなんだろうなってのは思った」

 だりあは大介の例の六角カップを手に、百合香の話を聞きながら少し考え込んでいた。

「百合香さ、チャンスは逃したらダメだよ」

 だりあは百合香の想いが本気なのかも知れない、と思った。