大介は茶杓を拭きながら、

「別にこのまんまでもえぇかなって思うときあんねんけどな」

 だりあの抹茶を飲む手が止まった。

「だりあちゃんは超がつくほどのお嬢さまやから住む世界がちゃうし、百合香ちゃんかてワイみたいのなんかより、もっと金持っとるイケメンあたりとっ捕まえたほうが、ナンボしあわせなことか」

 大介には卑屈な感じもなければ、皮肉めいた調子もない。

 しかしそれだけに。

 達観なのか諦観なのか、どこか醒眼を持っているようにも感じられる。

「人間って要は食うて働いてヤッてってだけの生きモンやし、うちはうちで作品で喜んでもらえたらモチベーション上がるしで、どっかでもぅえぇかなって面もなくはないし」

 フラットな明るい物言いにはそぐわない、捨鉢ではないが何か捨ててかかっているような、どうあらわしていいのか分からない気持ちが、だりあにはこみ上げてきた。