工房に入ると、大介は手馴れた調子で点前を立て、だりあと百合香に抹茶を振る舞った。
「こないだひさびさに関西帰ったから」
そうやって、行き付けだという衣笠の店で買ったバームクーヘンを出した。
「バームクーヘンと抹茶って合うんだー」
だりあには、初めての組み合わせであったらしい。
「私なんかたまに、バニラアイスに濃いほうじ茶かけたりするよ」
「まぁ世の中には抹茶味のバームクーヘンあるから、合わんことないやろって立ててみたんやけどね」
甘い物も大介は好物らしい。
「でも自分で茶碗焼いて抹茶立ててって、何か仙人みたい」
だりあの喩えに百合香は吹き出しそうになった。
「仙人って」
「あー、でもあながち遠くはないかも知らんなぁ」
大介には自覚があるようであった。