大介の生麦ベースに着くと、大介がシャッター前で鉢植えを手入れしている。

「大介さんおはよう」

「おはようさん…あ、だりあちゃんも来たんや?」

 大介は手をポンポンと叩いて土を払った。

「…きれいな花」

 コンテナ鉢に、紫の星型の花がわずかに咲いている。

「桔梗がそろそろ咲き終わりやから、花殻(はながら)摘んどった」

 そういえば生麦ベースは「桔梗窯(ききょうがま)」という正式な名称があるのだが、誰もそれでは呼ばずに、なぜか生麦ベースと呼んでいる。

「うちの家紋が桔梗やから」

 ということらしいのだが、目印代わりに咲かせてあるらしかった。

「とりあえず茶でも飲み」

 大介はシャッターを開けた。