三連休前の週末、だりあは仕事帰りの車の中でぼんやりとしていたが、渋谷のスクランブル交差点で信号待ちをしていると、横断歩道を渡ってゆく大介らしき人を見かけた。

 声をかけようとした瞬間、

「…誰?」

 大介は制服姿の、長い黒髪が印象的な女子高校生と並んで、紙袋を持って、ハチ公口の改札へ消えてゆく。

(彼女…な訳ないよね)

 大介はだりあと、一回り歳が離れている。

(もしかしたら…娘さんかな?)

 大介の歳から考えて、娘の一人や二人いたところで別におかしくも何ともない。

「お嬢さま、いかがされましたか?」

 運転手の声で我に返った。

「…何でもない。何でもないよ」

 信号が青に変わり、リムジンは再び動き始めた。