その点、大介の筆跡は百合香にすれば好印象であったようで、
「左利きなのは知らなかったな」
多少のことでは驚かないだりあが驚いたぐらいである。
「うちの会社にもサウスポーっているけど、だいたい癖のある字を書くから読みにくくて」
入力とかでは難渋させられるらしい。
が。
一緒に渡された名刺の裏のメッセージの大介の文字は、美文字というよりは書き慣れた様子の、意外にも美しい縦書きの綴りである。
「でもさ、イケメンで字がきれいで面白かったら、絶対に彼女いそうだよね?」
百合香は話しながら不安になった。
「少なくとも遊んでる話は聞かないけどね」
だりあの知る限り、女っ気はない。
「たまにテナントの管理人のオバちゃんが来るぐらいだって言ってたっけ」
まるで世捨て人のような暮らしであろう。
百合香はそれでも大介に良い印象を持ったようで、
「今度また寄ってみようかな」
そういうと、
「私も、また行ってみようかな」
「あれ? 気にしてないんじゃなかったっけ?」
百合香に指摘されて、だりあは初めてそこで自身の偽らざるところに気づいたらしかった。