真剣に何かに取り組んでいる眼差しは、日頃の毒舌家でとぼけたところすらある大介とはまるで違っていて、だりあは自分の鼓動が高鳴っていくのを、どうにもすることが出来ずにいる。
百合香は百合香で、
「…個展とか、やらないんですか?」
少しでも接点を持ちたかったのか、そんなことを訊いてきた。
「個展なら今度開くで。作品溜まってきとるし」
そこで作品売り捌いて稼がなあかんし、というと、
「じゃあその六角形も?」
「もちろん。売らんかったらただの道楽やないか」
だりあはすかさず、
「…それ、買うって言ったら?」
「一応、六千五百円って値段はつけてある」
こと売買となると、だりあは隙がない。
「気に入ったから買うね」
だりあはクレジットカードを出したが、
「カードの読み取り機、今ちょっと調子悪いねん」
「…仕方ないわね」
だりあは財布から一万円札を出した。