「お母さん! 今日ね、かの子先生のお手伝いしたんだよ。すごくがんばったんだから」
 かの子が振り返ってのぞみを見る。その時になって座敷童子の母親は、のぞみに初めて気がついたようだった。
「へぇ」
 マスカラの目で意外そうにのぞみを見た。
「こづえ、彼女はのぞみ。今日からあやかし園で働いてもらうことになったんだ」
 紅が紹介するのに合わせて、のぞみはぺこりと頭を下げる。
「よ、よろしくお願いします」
「人間じゃないか」
 こづえと呼ばれたかの子の母親は、呆れたような声を出した。
「紅さま、いったいどういうつもりです?人間が先生だなんて」
 他の親たちとは違う、少し遠慮のないこづえの言葉に、サケ子が眉を寄せる。
「あんた、紅さまのやることに文句をつけられる立場かい?保育時間も守らないくせに」