のぞみがしょんぼりとして言うとおじさんは気の毒そうに、「何か事情がありそうだね」と言った。そしてしばらく考えたあと、あるアパートを紹介してくれた。
「うちが扱っている物件じゃないんだが知り合いから格安のアパートを探している人がいたら紹介してほしいと言われているんだ。古い神社の敷地内にあるこれまたすごく古いアパートだから家賃は安くでいいし、保証人も保証料もいらないって言ってたような…」
「本当ですか!?」
 おじさんの言葉にのぞみは飛び上がる。学校を出たばかりののぞみにだって少しくらいなら貯えはあるが、それでも家賃は安ければ安い方がいい。
 思わずすぐにその話に飛びつきそうになって、でもすぐに"いや待てよ"と思い眉を寄せた。そんな都合のいい話があるのだろうか。古くて格安で…もしや事故物件?
 そんなのぞみの考えは、顔に出ていたようで、おじさんはぷっと吹き出すとはははと笑った。