まだ世間を知らないのぞみだけれど、保育士の仕事が大変な割にお給料が少ないということくらい知っている。ましてや、学校を出たてでまだ戦力になるかどうかわからないのぞみの給料としては多すぎると思った。
 もしかして私、良くない話に騙されかけている?
 宮司が、少しだけ申し訳なさそうにのぞみを見た。
「実はうちの保育園、勤務時間が特殊でさ。…夕方から深夜なんだ。だからなかなかなり手がなくてね」
「夜間…保育、ということですね」
 のぞみはもう一度契約書に目を落とした。なるほど、深夜勤務手当が入っているということか。
 宮司が神妙な顔で頷いた。
「事情があって夜にしか働けないという親御さんは案外と多いものだけど、夜に子どもを預かる保育園は限られているだろう? この街にはここしかないんだ」
 のぞみはふむふむと頷いた。
「うちの保育園に子どもを預けている親御さんの仕事は少々特殊だからね。小さい街だから、いろいろ噂になっても困るし。だから、契約書にはここでのことを口外しないことって項目が…」
「わかりました!!」