「こんにちは」

幸井雪緒は御堂誉と階巧の姿を見つけてやわらかく微笑んだ。笑顔は少女のようにも見える少年だ。

「こんにちは、雪緒くん」

高校から出てきた雪緒に、巧と誉は会いに来ていた。前回会った日から二日が経っている。

「幸井くん、少し顔色がよくなったように見えますね」

誉の言葉に雪緒は寂しげに笑ってみせる。

「まだ、気持ちは全然整理できてないんですけどね。でも、前を向かなきゃって思っています」
「強いですね、きみは。そうだ、時間があればまた少しお話ししませんか?」

友好的に誘う誉の言葉に、雪緒は一瞬たじろいだような表情をした。しかし、すぐにいつものなつっこい笑顔になる。

「今日は母と買い物の約束をしているんです。手短であれば、お話できます」
「助かるよ、雪緒くんが協力してくれるなら」

巧の友人のような態度に雪緒が目を細めた。
三度、近隣の緑地にやってきた三人は、二日前と同じ構図についた。誉と雪緒が並んでベンチに座り、前に巧が立っている。

「テストはどうでしたか? 帝旺学院は二学期制だから今が中間考査ですよね。勉強に身が入らなかったのではと心配していました」