ホームルーム前の教室というのは、いつだってすごく騒がしい。

 気力も体力も有り余っているクラスメートたちが、「おはよー!」「ねえ聞いてよ!」と、互いにエネルギーをぶつけ合っている。


「えーっ!? 紫外線って、八月が一番キツいんじゃないの!?」


 そんな、喧騒にまみれた朝の空間。自分の席でふあ、とあくびを漏らしていたとき、ひと際甲高い声が耳をついた。

 出どころは、教室中央に集まっている派手めグループの女子たちだ。同じクラスになって一週間ほど経つけれど、まだまともに言葉を交わしたことはない。


「違うって! 五月! 来月からが一番ヤバいんだよ!」


 聞こうとせずとも、勝手に耳に飛び込んでくる会話。へえ、と興味の薄い感想を抱き、俺は頬づえをついて、窓の外に視線を遣った。

 窓際一番後ろの席というのはいい。クラスの様子を一望できる上、授業中寝てしまっても先生にばれにくい、絶好のポジションだ。

 地上三階から、目下に広がる外の風景をぼんやりと見つめる。等間隔で植えられた桜並木が、綺麗にグラウンドを囲っている。

 春を知らせる柔らかなピンク色は、俺がこの城下高校に入学した当時からちっとも変わっていない。