空気までが薄ピンクに染まる中で、彼は静かに花を見上げていた。
 穏やかなブラウンの瞳が印象に残った。何も言わずに立ち去ることが出来なくて、その日のあたしはその人に声をかけた。

「なに、してるんですか?」
「人生に迷ってるんだ」
「……そうですか」

 変な人だと思った。
 それがちょうど一年前。入学式の日。
 あたしと先輩との出逢いだった。