この学校の生徒指導主事は女の先生らしいが詳しくはよく知らない。おそるおそる生徒指導室の扉を開ける。すると中には既に生徒が三人いた。しかも全員女子である。全く面識もないし何故一緒に集められたのだろうか。椅子は四脚並んでいたので空いている端っこに座る。
 少しするとドアが開いた。ドアの方をみると、一人の女性が立っていた。そしてこちらに近づきながら話始める。
「今年はバカが五人いた。お前らとここにはいないがもう一人いる」
そして椅子の前にあった長机に手をつき振り返る。
「まぁそれは置いといてだ。この学校には確かに規則が緩い。だが一つだけ絶対に守らなければならないルールがあるが、お前らはそれに反した」
すると俺とは逆の反対側にいた生徒急に立ち話し始める。
「すいません。そのルールとはなんでしょうか。私にはそんなものあった記憶がないのですが」
すると教師はため息混じりに話し始める。
「そうか…、知らなかったか。入学のオリエンテーリングで全員聞いてるはずなんだけどな。この学校の最も守らなければならないルールは部活動に入ることだ。それでお前らは決めていないから呼ばれたんだ」
 すると立ち上がった少女はああと頷き、再び席につく。それで納得したのか。なら何故部活に入っていないのだろうか。そしてまだ先生の話は続く。
「そしてこの場で決めてもらうことがある。入部届を書くか、それとも退学するかだ」
退学とはまた大層なと思ったが入学一週間で非行をしたわけでもないのに退学とは流石に笑えない。冗談ではないだろう。
「それじゃあ、入部届を書くものは残れ、書かないものはその扉から出て行ってくれ」
そう言い終わった途端すぐにさっき質問していた少女が立ち上がりこの部屋から出て行った。ほんとにこういうので出ていくやつっているんだな、と少し尊敬する。先生は扉が閉まるのを静かに見届けると少し目を閉じてため息をつく。
「まぁ。じゃあ他の三人はどの部活に入るか決めてくれ」
そして数刻の沈黙の後、隣の生徒が急に顔をこちらに向けてきてしばらく視線が絡む。視界の端でこの様子を不思議そうに先生が見ているのがわかる。俺も訳がわからない。
 すると隣の生徒は視線を俺から外して先生へと向ける。
「それならこの三人で部活を作ります」
すると先生はニヤリと笑い、いいだろうと言った。先生はすぐさま部活設立申請書なるものを取り出し顧問の欄に自分の名前を書いてその少女に渡した。そして迷うことなく名前を副部長の欄に書き隣の生徒に部長のところに名前を書くように催促する。そして押し切られる形で書かされた紙が俺の元へと回ってくる。
 紙を手にしたまま俺はそいつに尋ねる。
「何をする部活なんだ?」
「知らない」
と首を横にふられた。
「何故あんたが部長じゃない」
「めんどくさいから」
とキョロッとした悪びれることのない顔で答える。
「俺が入らなきゃいけない理由は?」
すると少し考えて、ないと答えた。
「拒否権は?」
と聞くと先生が退学になりたいのかしらとどことなく言う。やはり退学になるわけにはいかないし、他に入りたい部活もないので名前を書く事にした。
 こいつの名前は小倉彩香で部長の名前は紗音小春、先生の名前は坂本杏香らしい。そして部員の欄に河口和弥と書く。書き終わった途端に先生に紙を奪われてしまった。んな乱暴な。
「じゃあ今日中に部活名と活動内容だけ決めてくれ、部屋はまぁこの部屋でも使ってくれ人こないし。誰も使わないし。ああ、決めたことは帰りに職員室に来て教えるように」
と言うとその紙を持って部屋を出て行った。

「小倉これはどうゆうつもりだ?」
「だってあのまま他の部活に今から入るっていうのはハードル高いだろ、それなら新しく作った方が楽だと思って。それにちょうどおんなじような境遇の方がいらっしゃったし。というか急にさん付けも無しい?面識があったわけでもないし少し大胆じゃないかな」
「それは確かにそうかもしれないが」
「まぁおんなじ部活になる関係だし気さくでもいいか。よろしくな河口君。それに小春ちゃんも。」
そう言われた紗音さんは肩をびくっと揺らした。そして「別に呼び捨てで大丈夫」と静かに言った。
「そうかじゃあよろしくな小春」
紗音さんは震えた声ではいと小さく答えた。
「それで小倉この部活は何をするんだ?」
「うーん小春は何すればいいと思う?」
「えっと、思いつかないです」
とまた小さく答える。
「ということだし河口君が決めたら?」
とそんな流れで月に一度情報紙を出す部活に決まった。そして名前も情報文化部に決まった。略して情報部である。こんなのでほんとにいいのだろうか。新聞部的なのと被ってる気がしなくもないが。