私を寝かしつける度に、「ママには言っちゃダメだからね」そう言って釘までさして。お行儀悪くお布団の上で2人、よくお菓子を食べていたね。

「みっちゃんにこれは、まだ早いかなあ」

私にくれた事はなかったその洋酒入りのチョコレート。
食べては「酔っちゃった」だなんて、力なくヘラヘラと笑っていたっけ。

まだ幼かった私は、アルコールに侵食されてしまって泣き言を言ちる彼を、どうしようもない大人だと思って。

その背中に腕を回して、彼と同じ大人を見真似て。
柔らかな黒い髪の毛を撫でていたけれど。

本当の大人になった時に、アルコール分3・2%のチョコレートには、強がることが得意だった彼の背中を丸める力がないことを知った。