「顔、見られたくないからそのままで」
「あ……うん」
「ずっと好きだったんだ。だけど、夢のためにはあきらめないと、って思った。でもできなかった」

 嘘でしょう……。頭がぐるぐる回っている。

「亜弥がいるからがんばれるんだ。だから、これからも俺のそばにいてほしい」
「私も……私も好き」

 やっと言葉にできた思いがさらに涙を生む。悲しい涙じゃなく、うれしい涙はすごく温かくてやさしいんだね。

 ようやく体を離した私たちは少し笑い合った。

「もう悩んだりすんなよ。俺がいるからさ」
「うん」

 そうしてリョウは私の胸元に光るペンダントに指先で触れた。
 ペンダントは私とリョウとの約束の架け橋だ。もう外したりはしない。

「リョウの夢が叶う日まで大切に預かっておくね」

 そう言う私にリョウは短すぎるキスをした。

 ぽかんとする私に、「約束だからな」と手を振りバイクにまたがる。

「……うん」
「明日、PASTに来てくれる?」
「うん」
「あさっても?」
「うん」
「うん、ばっかだな。おやすみ」

 ヘルメットをかぶるリョウに手を振った瞬間だった。



『強く引っ張って』



 すぐそばで伊予さんの声が聞こえた気がした。

 それは脳に直接語りかけるような声。
 昨日私に言ったときよりも、どこか切迫したような言いかただった。


 え……?