そう言って女性が指を差したのは、リビングの飾り棚に立てかけたフォトフレームだった。
中の写真は、暖花さんの結婚式で撮ったものが飾ってある。
そこに写った理人さんの姿が見えたのだろう。
けれど目の前の女性は、たぶん私が初めて会う人だ。
トロイメライの常連さんでもない。
ならば、彼女はどうして理人さんのことを知っているのだろうか。
「あら、 美幸ちゃん!?」
私が女性の正体に首を傾げていると、ちょうどリビングにやってきた理人さんが、彼女を見るなり驚いた声を上げた。
「理人くん……!」
「“道端でうずくまってる人がいた”って聞いて来てみたら、まさか美幸ちゃんのことだったなんて」
「偶然妹さんに助けてもらったの。理人くんも仕事中にごめんなさい」
「アタシは平気よ。具合はもう大丈夫なの?」
「おかげさまで。それにしても久しぶりよね。お互いずっと忙しくて、連絡も取れなかったし」
親しげに話し始めた二人は、どうやら顔見知りだったらしい。
しかし、それならばこの女性は一体どなたなのだろうか。
さらに不思議に思いながら二人を眺めていると、そんな私の様子に気づいたらしい理人さんが、彼女を紹介してくれた。
「雨音は初対面だったわね。アタシの高校の同級生だった 佐野美幸ちゃんよ。名簿の席順が前後だったのがきっかけで、ずっと仲良しなの」
「佐野美幸です。よろしくね、雨音ちゃん」
「はい、こちらこそ」
なるほど、彼女は理人さんのお友達だったらしい。
にこりと微笑んだ美幸さんは、理人さんと同じく穏やかで、とても優しそうな人だと思った。
二人が友人関係なのも頷ける。
「それにしてもびっくりしちゃった。まさか偶然雨音ちゃんに会えるなんて。私、ずっとあなたに会ってみたかったの」
「私にですか?」
「ええ。昔はよく、理人くんからあなたの話を聞かされてね」
そこまで言うと、美幸さんは突然くすくすと笑い出した。
「あれ、大学時代よね。可愛い妹ができたんだって、散々自慢してきたの。写真とかも見せてくれて」
「写真!? ちょっと理人さん、そんなことしてたの!?」
「うふふ、そんなこともあったわねぇ。懐かしいわ」
「もー、恥ずかしいなあ……!」
「でもあんまり大きくなってるものだから、全然気がつかなかったわ。今は高校生?」
「は、はい……」
知らないところで自分の話をされていたという事実に、顔がとてつもなく熱くなる。
しかしそんな私に対し、理人さんはどこ吹く風というように笑った。
ちょうどお昼休みに入るところだったので、それから美幸さんも交えて、私たちは昼食をとることになった。
今日のメニューは、私の作った和風パスタと夏野菜のサラダだ。
パスタの味付けは以前理人さんに教えてもらったもので、今日はなかなかに美味しくつくれたと思う。
美幸さんを助けてくれた功績をたたえ、キルシェには大好きなキャットフードをあげると、彼女は満足そうに平らげていった。
「お昼までごちそうになるなんて、本当に悪いわ」
「いいのよぉ。みんなで食べた方が美味しいもの」
中の写真は、暖花さんの結婚式で撮ったものが飾ってある。
そこに写った理人さんの姿が見えたのだろう。
けれど目の前の女性は、たぶん私が初めて会う人だ。
トロイメライの常連さんでもない。
ならば、彼女はどうして理人さんのことを知っているのだろうか。
「あら、 美幸ちゃん!?」
私が女性の正体に首を傾げていると、ちょうどリビングにやってきた理人さんが、彼女を見るなり驚いた声を上げた。
「理人くん……!」
「“道端でうずくまってる人がいた”って聞いて来てみたら、まさか美幸ちゃんのことだったなんて」
「偶然妹さんに助けてもらったの。理人くんも仕事中にごめんなさい」
「アタシは平気よ。具合はもう大丈夫なの?」
「おかげさまで。それにしても久しぶりよね。お互いずっと忙しくて、連絡も取れなかったし」
親しげに話し始めた二人は、どうやら顔見知りだったらしい。
しかし、それならばこの女性は一体どなたなのだろうか。
さらに不思議に思いながら二人を眺めていると、そんな私の様子に気づいたらしい理人さんが、彼女を紹介してくれた。
「雨音は初対面だったわね。アタシの高校の同級生だった 佐野美幸ちゃんよ。名簿の席順が前後だったのがきっかけで、ずっと仲良しなの」
「佐野美幸です。よろしくね、雨音ちゃん」
「はい、こちらこそ」
なるほど、彼女は理人さんのお友達だったらしい。
にこりと微笑んだ美幸さんは、理人さんと同じく穏やかで、とても優しそうな人だと思った。
二人が友人関係なのも頷ける。
「それにしてもびっくりしちゃった。まさか偶然雨音ちゃんに会えるなんて。私、ずっとあなたに会ってみたかったの」
「私にですか?」
「ええ。昔はよく、理人くんからあなたの話を聞かされてね」
そこまで言うと、美幸さんは突然くすくすと笑い出した。
「あれ、大学時代よね。可愛い妹ができたんだって、散々自慢してきたの。写真とかも見せてくれて」
「写真!? ちょっと理人さん、そんなことしてたの!?」
「うふふ、そんなこともあったわねぇ。懐かしいわ」
「もー、恥ずかしいなあ……!」
「でもあんまり大きくなってるものだから、全然気がつかなかったわ。今は高校生?」
「は、はい……」
知らないところで自分の話をされていたという事実に、顔がとてつもなく熱くなる。
しかしそんな私に対し、理人さんはどこ吹く風というように笑った。
ちょうどお昼休みに入るところだったので、それから美幸さんも交えて、私たちは昼食をとることになった。
今日のメニューは、私の作った和風パスタと夏野菜のサラダだ。
パスタの味付けは以前理人さんに教えてもらったもので、今日はなかなかに美味しくつくれたと思う。
美幸さんを助けてくれた功績をたたえ、キルシェには大好きなキャットフードをあげると、彼女は満足そうに平らげていった。
「お昼までごちそうになるなんて、本当に悪いわ」
「いいのよぉ。みんなで食べた方が美味しいもの」