何年も一緒にいたら私のおかしさに気づくだろう。だからもうここが限界。

駅まで来ると二人は改札を抜ける。階段の隅で供が月の顔に手をあてて抱き寄せる。
「さっきの話さ…」
さっきの?と月は思う。
「月と月乃が誰であっても僕にとってはどちらも大事な月の子だよ」
二人は別々のホームへと階段を上がっていった。線路を挟んで向こう側に供の姿がある。月は小さく手を振りまたね、と微笑んだ。

空いた電車に揺られて暗い空を見上げる。このままこの電車に乗って終点はきっと森の中、そう思いながら月は目を閉じた。