3月卒業式が終わるとそれまで仲の良かった子達と写真を撮って「連絡取り合おうね」なんて言い合ったりした。月乃が一時的に持っていた携帯は誰かの落とし物をそのまま使っているにすぎない。いつ使えなくなってもおかしくないこの携帯は三年間も動き続けたのだ。
「ボタンとか交換しない?」
そう言って制服のボタンを供が差し出す。
「ちょっと待ってね」
月乃もブレザーのボタンの縫い糸をぐるぐる回して取ろうとするがこれが意外に固い。「貸して」と供が変わる。いい匂いがする。なにかはわからないけれど校庭の桜の木と相まって石鹸のような爽やかな匂い。月乃はなんとなく手持ち無沙汰な右手で供の横顔に触れてみた。供が月乃を見つめたかと思うと月乃の手に自分の手を重ね、もう片方の腕がそのまま彼女を肩を抱き寄せた。あったかいな。彼女はそう思った。
4月新しい生活が始まるとともに、多月はそれまで出会った人との連絡を経ちみんなの前から姿を消した。
「ボタンとか交換しない?」
そう言って制服のボタンを供が差し出す。
「ちょっと待ってね」
月乃もブレザーのボタンの縫い糸をぐるぐる回して取ろうとするがこれが意外に固い。「貸して」と供が変わる。いい匂いがする。なにかはわからないけれど校庭の桜の木と相まって石鹸のような爽やかな匂い。月乃はなんとなく手持ち無沙汰な右手で供の横顔に触れてみた。供が月乃を見つめたかと思うと月乃の手に自分の手を重ね、もう片方の腕がそのまま彼女を肩を抱き寄せた。あったかいな。彼女はそう思った。
4月新しい生活が始まるとともに、多月はそれまで出会った人との連絡を経ちみんなの前から姿を消した。