芦野はスライダーのサイン。

 清正は信じて投げるしかない。

 今度は、さすがにスッポ抜けなかった。

 が。

 まるで掬い上げるように打ち上げると、次はバックスクリーンに打球は吸い込まれた。

「…もしかして、スライダー狙いか?」

 清正は芦野に疑問をぶつけた。

「次のバッターでスライダー振ってきたら切り替える」

 六番打者は左。

 左投げの清正には有利である。

 サインは、…スライダー。

 振って来ない。

(…やっぱりストレート狙いか)

 ストレートのサインが出た。

 芦野はインコースにミットを構えた。

「よっしゃ」

 清正は大得意のインコース、膝下めがけて渾身ストレートを投げた。

 打たれた。

 コースは悪くない。

 膝下へ投げ込んだはずだが打たれた。

 二者連続のホームランである。

「…嶋、これはまずいで」

「そんなん分かっとるがな」

 あのコースを打たれたら、あとは逃げながら躱してゆくより他ない。

 七番バッターはスイッチヒッターで、右にまず立った。

「データでいけばストレート投げても大丈夫なはずやが」

 またしても打たれた。

 ヒットになって一塁にいる。