打球は折からの風にのって、またたく間に外野スタンドのぎりぎり座席側に入った。
スタンドは盛り上がる。
「…しくじった」
恥辱的な先頭打者の初球ホームランである。
「引きずるな、まだ初回や」
芦野が駆け寄った。
「すまん、せっかくのリードを」
「次からしっかりやろう」
二番、三番とスライダーで三振に仕留め、四番打者が来た。
スライダーを見てきた。
芦野はカーブのサインを出した。
清正はかぶりを振った。
何度もサイン交換したが合わない。
マウンドに芦野がゆく。
「ここはカーブやろ」
「ストレート今日まだ投げてへん」
「ここではないやろ」
仕方なく清正はカーブを投げたら、セカンドゴロでアウトを取れた。