「…あのさ」

 優子がいいかけた瞬間、バスが来た。

 すぐさま乗った。

 かなり疲れ果てたのか、優子はそのまま翔馬の肩に頭をのせて、ターミナルまで眠ってしまった。

「…着いたで」

「うん…」

 目をこすりながら優子が起きると、夕暮れのターミナルである。

「郷原、なんか言おうとしたんか?」

「…寝とったけぇ覚えとらん」

 翔馬は苦笑いした。

「ま、思い出したら聞く」

 すでに暗くなり始めた坂道を、二人は登り始めた。