ここまで、強豪古豪ひしめく京都の府大会を一人で投げ抜いてきた清正には、簡単には打たれない秘策があった。
「緩急とコーナーワークだけ間違えなければ、多少球速が遅くても何とか打ち取れる」
という、経験値から導き出した独自の配球術である。
現に府大会の決勝、黒谷大学付属高戦では八回まで相手に二塁すら踏ませないピッチングを見せ、府大会のあとの合宿のときには二球団ほどスカウトが清正を見に来たことすらあった。
「でもワイひとりで野球は出来ん」
キャッチャーの芦野弘大がいなければ、読み通りに球を振ったり見逃したりはしてくれない。