昼下がりの甲子園球場、七日目の第三試合で四十九代表の殿(しんがり)として京都府代表、三十八年ぶり二回目の出場である府立()(きょう)(かん)高校が登場すると、関西のチームだけにアルプススタンドだけでなく、内野外野のスタンドからも拍手がわき起こった。

 じっとりとした汗の出そうな蒸し暑い日で、

「七回あたりまで投手戦に持ち込めば、勝ち目はあるかも知れへんな」

 監督はサラッと言ってのけたが、

(…いっぺん投げてみろや)

 エースナンバーをつけたピッチャーの嶋清正は内心、軽々しい監督の言葉を小馬鹿にした様子でブルペンに向かった。