有澤雪穂がアイドル部に入った切っ掛けは、

「ねぇねぇ、そこの可愛いリボンの美少女ちゃん!」

 と、当時の部長であった関口澪の、まるでナンパのような一言がすべての始まりであった。

「その髪留め、どこで買ったの?」

 澪は返事を急いで求めようとはしない。

「…これ、ハンドメイドです」

 苫小牧の祖母が作ってくれた、今では形見となっていた模様入りの大きなリボンがついたバレッタスタイルの髪留めである。

「その模様は?」

「何かよく分からないんです」

 雪穂は言った。

 のちに澪は知ることになるが、それはシマフクロウが翼を広げた模様が、シングルラインで縫い取られた紺色のリボンバレッタで、恵まれた髪質のロングヘアを束ねてある。

 それが、クッキリした二重瞼の色白な雪穂によく似合った。