とりわけ赤橋あやめとは同じマンションであったから、交換日記をつけたり、一緒に宿題をしたり…と、共にいる時間は長かった。

 みな穂とあやめが大通公園のそばの本屋まで参考書を買いに出たとき、みな穂は一度だけだが、デモに遭遇したことがある。

 声高に主張を叫び、プラカードにはイデオロギーを書き、その日は雨であったが傘もささずに、おのれの意を拡声器にのせて、信号の向こう側のテレビ塔めがけて叫んでいた。

「…何か、騒がしいよね」

 というだけで特に感懐もなく、世の中には様々な人はあるが、死んだ人間ほど静かなものはないと思ったのか、

「…あやめってさ、ああいったの見てどう思う?」

 みな穂は訊ねた。

「なんとも思わないけどなぁ」

「津波で流された友達がいるんだけど、その子はもう霊になってて、別に雨風も巻き起こさないし、騒ぎもしないし、そんなに静かなものだったら、もっと大切に生きなきゃなんないのかなって」

 みな穂には、違う世界が見えていたのかも知れない。