一週間ほどして桜子が戻って来ると、里菜は制服の左腕に喪章を巻いていた。

「…里菜ちゃん?」

「アイドルがこんなときにどれだけ無力なのか分かったから、こうやって意思を示すしかないのかなって」

 里菜なりに考え抜いた上での、精一杯の思いであったらしい。

「…いいんだよ、もういいんだよ里菜ちゃん」

 桜子は静かに里菜の喪章を外し、みずからの左腕につけた。

「…ありがと」

 これでアイドル部はいつもどおりになるよ──桜子は涙の跡もそのままに、微笑んでみせた。