約束の日曜日、朝早くバスターミナルで待ち合わせた翔馬と優子は始発のバスでまず島と本土を結ぶ橋を渡って呉まで出て、呉線で広島駅まで出てから、宮島口を目指した。

 優子は真っ青なワンピースにレースがついたお気に入りの一着を着て出てきた。

 たまにレースを買いにぐらいしか来ない呉の街ですら混んでいるように見えるのに、まして広島は当時の優子にすれば大都会で、翔馬とはぐれたら二度と島に帰れないのではないかと、心細くなってきた。

「郷原とはぐれたら、俺が困るけぇ」

 急に翔馬は優子の手を握った。

「…」

 優子は言葉にならない言葉を探したまま、首まで真っ赤になるぐらい耳まで紅潮した。