少し遅れて里菜が桜子を見つけると、 「桜子…大丈夫?」 桜子は何も答えない。 「…がんばれ、まりなさん」 私たちのライブを見て元気になって──里菜の願いは、夜明け前に断たれた。 里菜は泣き崩れる桜子に寄り添っていたが、 「ごめんね、授業行かなきゃならないから」 私がノート取って貸すから、と里菜は外へ出た。 陽射しが眩しい中、タクシーの車内では必死にこらえていたが、校舎に着いてトイレへ駆け込むと、里菜は声を殺して哭(な)いた。