人には時に、思いもよらない縁というものがある。

 英賀(あが)(たける)が旧姓を鳴瀬といった妻のまりなに出逢ったのも、そういったものであったか分からない。

 まりながパートで働いていたワッフル屋のキッチンワゴンに常連として来ていたのが健で、いい大人の男が独りでワッフルを毎週買いに来るので、まりなが気になって声をかけたのが馴れ初めであるのだが、今となっては懐かしい話であったらしい。

 健の五歳上のまりなには桜子(さくらこ)という連れ子がある。

 まだ頑も是もつかなかった頃に桜子の父親となった健は、桜子を自分の子のように可愛がることしきりで、高校へ入る際に桜子が、学校への提出用に戸籍を役所で取るまで、健と血の繋がりがなかったこと自体が分からなかったほどである。

 しかし。

 高校の入学式にまりなの姿はなく、

「まりなが退院したら、三人で写真を撮ろう」

 と健は、まだ雪の残る校舎の背後の手稲山を見ながら言った。