しばし考えていたが、顔を赤らめたすみれは周りを見回してから、

「あのね…実は私も、蠣崎のこと好きなんだ」

 これには逆に廣健が驚いたが、

「じゃ、カップル成立だな」

 廣健は握手を求めた。

 すみれは手をつなぐことで応じた。

 早速二人で手をつなぎながら廊下を歩いていると、

「蠣崎!」

 見ると、顔を真っ赤に怒らせた毒まんじゅうこと大内がいる。

「話が違うだろ!」

「…仕方ないだろ。俺は橘に話をしたけど、俺だって橘が好きだから、しかも彼女はお前のことをあんまり好きではないらしいから、守ることに決めたんだ」

 自分で告白しなかったお前が悪い、としたたかに言い放った。

「金があるからって、誰でも言うことを聞くと思うなよ」

 廣健の凄みに、とうとう毒まんじゅうは泣き出した。

「裏切り者…!」

「なんとでも言え、意気地なし」

 廣健は悪役をかぶることで、すみれを守りたかったのかもしれない。