集落の小中学生は全部で四十人もいるかいないかで、その中で特に優子の服は少し変わっていたからか、

「郷原さんとこの優ちゃん、少し変わっとるけぇありゃ何かの病か何かじゃなかろうか」

 などと言われ、さすがに思春期を迎え中学も受験生となると、寄り付いて遊ぶ者もほとんどいなかった。

 生徒の間では、

──あれは中二病ぞ。

 などと噂され、たまにではあるが椅子に画鋲を撒かれたり、鞄がゴミ箱に捨てられたりというのが起こるようになっていた。

 しかし。

「郷原、一緒に帰らん?」

 いつも誘ってくれたのは、造り酒屋の手前の駐在所に住む、警察官の息子の清平(きよひら)翔馬であった。

「うちといると、ショーマも一緒にいじめられるけぇ…」

 消極的な優子に、

「おなごを守るんが男じゃ、そげなもん構わん」

 気にすることなく並んで坂をのぼってゆく。