三月、他所より少し早く咲く桜を見捨てるように、優子と翔馬は島からバスで呉駅へ出た。
呉からは空港までバスが出ていて、優子は午後のフライトで新千歳まで行く。
「ここで、とりあえずお別れかぁ」
翔馬は広島から新幹線なので、呉線へ乗る。
「LINE交換しとこ?」
優子に言われ、二人はLINEのIDを交わした。
「…うちの純潔ば奪ったんじゃけ、責任取りんさいよ」
優子は小さく囁いた。
「お、おぅ…」
翔馬は面食らったが、
「さよならはうちは言わんよ」
「…またな、優子」
優子が乗った空港行のバスを、小さく消えるまで見送ると、翔馬は切符とリュックを手に、呉駅の改札へと消えていった。