バレンタインの夜、翔馬は優子の屋根裏部屋の窓の下まで来ると、
「…OK」
優子は物音をたてないように抜け出した。
「一応、ゴムだけは持ってきたよ」
二人は前に夜景を眺めた蜜柑畑の中へ入ると、
「…会えなくなる前に、ね」
翔馬と優子は、中学生らしからぬキスを交わしたあと、互いの初めてを捧げあった。
「…優子、大丈夫?」
「大丈夫」
優子は翔馬がこんな時でも優しいとは思わなかったらしく、初めてのはずなのに興奮してしまった。
「…ありがと」
二人はしばらく抱き合ったまま、星を眺めていたが、寒くなってきたのを頃合いにそれぞれ帰途についた。