クリスマスが近づいた頃、蜜柑畑の坂から少し入った丘の開けた穴場へ、優子は翔馬に連れてきてもらった。

「ここな、よう夜景が見えるん」

 遮るものがない海の向こう側に、まるで煌星(きらぼし)でも散りばめたような広島の街の灯が見える。

「俺は優子がどこに行っても、必ず待ってる。ほじゃけぇ、優子は優子らしく夢を追えばえぇ」

 優子は何だか申し訳ない気持ちになって、

「ショーマ、ごめん…」

 目には涙が浮かんでいる。

「泣かんでえぇ。俺も島を出て、大阪にスポーツ推薦で行くから」

 互いに夢を叶えて再会しよう、と翔馬は言った。