ー方徒を知らぬー


     ーこれは呪いの物語ー






世の中には、
科学では割りきれない世界がある。

幽霊とか妖精とか、
世界紛争(せかいふんそう)とか宇宙の真理とか、はたまた
女性のヒステリーとかバイセクシャルとか、
幼児愛好家(ようじあいこうか)とか、放尿(ほうにょう)()きとか。

死語(しご)の世界もそんな中の1つだろう。

何も俺は変態(へんたい)ではない。

まして精神論者(せいしんろんしゃ)でも、中二病患者でもない。

俺がこんな考えに取り付かれたのは、
道徳観や新興宗教(しんこうしゅうきょう)でも、
ましてや精神論でも、
変態や変体の(たぐ)いでも無いことを、
自身の名誉のためにここに宣言しておく。

そんな事を踏まえた上で、
あえてここに断言(だんげん)するなら。

真実はときに残酷(ざんこく)で美しく、そしてエロい。

学生失格の落ちこぼれが妄想(もうそう)(とり)つかれ、
夢のネバーランドに、
旅だった(わけ)ではない事は、
この証言を参考に考察(こうさつ)して(いただ)くとして。

・・・してだ。

俺は目の前にある現実は、
まさにそんな前置きを凌駕(りょうが)するに(あたい)する、
ワンダーランドに(あふ)れていた。


脳内にリテンション(保持)された、
データベースにアクセスするが、
この状況(じょうきょう)を表す言葉は見つからない。

いや理解不能。思考(しこう)停止。バグ発生の、
三大トライアングルに(おちい)っている
真っ最中(まっさいちゅう)だったりする。

俺の名は菊池和輝(きくちかずき)

花の16才。

俺は菊池和輝。

童貞(どうてい)16の春。

俺は菊池和輝。

シスコん歴10年。

俺は菊池和輝。

(よわい)16にして、
夢を卒業し現実を見据(みす)える未来ある若人(わこうど)

俺は菊池和輝。

俺は菊池和輝・・・

「やよ、そこな(しゅう)
 先達(せんだ)って、
 何を()(ごと)(もう)しておるのじゃ?」

変なコスプレをした幼女(ようじょ)が、
俺のベッドを不当に占拠(せんきょ)し、
これまた変な日本語で俺に(ささや)く。

人に死があるように、言葉にも死がある。

死語の世界。

忘却(ぼうきゃく)彼方(かなた)に旅だった(こと)()たちの墓場。

そんな死語の世界から(ささや)かれた声に、
体が死語硬直(しごこうちょく)する。

幻覚、幻影、空音(そらね)(たぐ)いに違いない。

「さては其許(そこもと)
 俗諺(ぞくげん)に聞くスカトロじゃなかった・・・
 ストーカーとか言う(やから)か?」

不法侵入(ふほうしんにゅう)した幼女が、
異世界の言語をつむぐ。

「お前が言うなー!」

思わず幻影に叫んで、
自分の症状(しょうじょう)深刻(しんこく)さを再確認する。

「なんじゃお(ぬし)。やたら狂暴じゃが。
 発情と言うやつかえ?」

変に古びた口ぶりで、
変に大人びた言葉を話すこの生物。

この珍語(ちんご)(しゃべ)る幼女はなんぞや。

未知の新種と思えるが、
どんなに観察しても、
やはり幼女(ようじょ)にしか見えない。

銀髪にスカイブルーの瞳、和服(わふく)にチビと、
変にカスタマイズされてはいるが、
やはり幼女だ。

和装(わそう)貴婦人(きふじん)ならぬ、
「わっ!そうなの」のちんちくりんだ。

可愛(かわい)さはあるが、
大人の魅力は皆無(かいむ)のまな(いた)幼女(ようじょ)だ。

幼女だ。
妖女だ!
幼女だ!?

「いや冷静になれ俺。
 中二病は卒業した(はず)だ」


多分・・・



         ー1ー