「カゴメー(誰が守る)
カゴメー(誰が守る)

カゴー ノェ ナカ ノェ トリー ヴァ
(守護(しゅご)して(ふう)じ、安置(あんち)して閉ざされた物を取り出せ)

ヒィツィ ヒィツィ ディユゥー
(火をつけろ燃やせ箱を((うつわ)を)

ヤーアカー バニティー ツー
カメア ショーヴェテ
(神の(やしろ)根絶(ねざ)やしにせよ。
造られたお守りの岩もご利益(りやく)もなく)

フーシャー ショーメム ダーラッ
(焼かれた荒れ地は見放された)」


ヘブライ語?


「鬼さんこちら。手の鳴るほうへ」


遊び(うた)はいつの()にか、目隠し鬼にかわっていた。


「お兄さんこちら。テの鳴るほうへ」


まるで隠し神に(たた)りつかれた(よう)な声がしていた。

その声に(さそ)われ僕は、
いつの間にか開けた場所に出ていた。

そこは空蝉(うつせみ)とは思えない夕顔(ゆうがお)が、
花宴(かえん)(ごと)く咲き(ほこ)っていた。


子捕(こと)り、子捕(こと)
加護(かご)の中の』子捕《こと》りは
いついつでやぁう  夜明けの晩に 
鶴と亀がすべった 後ろの正面だぁ~れ」


隠し神はかくれんぼする子供を(さら)うと言う。

そう思い()ったたと同時に、
背後から足音が駆けて来るのが聞こえた。


そして背後でその足音がピタリと止まる。

同時に僕の心臓も、
止まりそうなほどの()(あせ)をかいていた。


固まった体が、背後(はいご)確認(かくにん)するのを(いや)がっていた。

そんな沈黙(ちんもく)(やぶ)(よう)に、
ふいに背後から僕のシャツが()()られた。


そして(わらべ)の声が(ささや)く。


「後ろの正面だぁ~れ」


無邪気(むじゃき)で恐ろしい声に(さそ)われる様《よう》に、
恐る恐る背後(はいご)を振り返る。


そこには何もなかった。


ただ通って来た石畳(いしだたみ)が続くだけだった。


左右を(ふさ)雑木林(ぞうきばやし)が、(かす)かに()れていた。